「きーよし、こーの夜~♪」ポヨンが星を見上げながら、楽しそうに
歌っています。ハンナは隣に座ると、一緒に空を見上げて言いました。
「今年こそ、サンタさんに会いたいなぁ」
今日は、クリスマス・イブです。空気は凍るように冷たいけれど、
夜空は宝石箱をひっくり返したような星たちでにぎやかです。
「あっ、流れ星!」
ポヨンが指さすと、
「サンタさんに会えますように」
ハンナはすかさず星にお願いをしました。
「ポヨン!ハンナ!」
グーラは興奮した様子で走ってくると、いきなりふたりの手を引っぱりました。
「グーラったら、何するの!?」
「すごいものを、見つけたクサ」
「すごいもの?」
グーラは先頭に立って、ずんずんと歩いていきます。
やがて立ち止まると、ふたりを振り返って言いました。
「ホラ、あれだクサ」
グーラの指さす先には、赤い布のようなものが見えます。
ポヨンたちは、ゆっくりとその布の方へ近づいていきました。
「わっ!これ、サンタさんの帽子じゃないの!?」
ハンナが驚いて大声をあげました。よく見ると真っ赤な布は
三角形の帽子の形をしていて、白いボンボンもついています。
「サンタの落とし物だクサ」
「じゃあ、今晩ここにサンタが来たっていうことだよね?」
「ねぇ、サンタさんまだこの辺にいるんじゃないかしら。
探して、帽子を届けてあげましょうよ」
ハンナは、さっそく流れ星に祈ったお願いがかないそうで、
わくわくしていました。
3人は一緒に帽子を持ち上げると、サンタを探して歩きはじめました。
河原は暗くて、まわりの様子がよくわかりません。
「どうも、よく見えないクサ」
「サンタはそりに乗ってくるはずだよね。大きなトナカイたちも
たくさんいるから、暗くてもすぐわかると思うんだけどなぁ」
「トナカイは鈴をつけているのよ。きっと、鈴の音が聞こえるはずだわ」

そんなことを話しながら、土手の方へ向かって歩いていると、
どこからか変な音が聞こえてきました。シャランシャランというより、
グオーグオーという感じです。とても、鈴の音とは思えません。
「何の音クサ?」
「サンタさんは、こんな音出さないわよ」
それでも3人は、音のする方へゆっくりゆっくり近づいて行きます。
どうやら、土手の近くに立つ大きな木の方から聞こえてくるようでした。
グオーグオー、グオーグオー。音は同じリズムで、ずっと続いています。
「なんだか、ちょっと恐い感じよね」
グオーグオー、ブルルルル、グオーグオー。
「あれ?今、変な音が入ったよ」
「トナカイだクサァ!今のは、トナカイの鼻息に違いないクサ」
グーラはそう言うと、急に走り出しました。
ポヨンもハンナもあわてて、走り出します。
3人はハァハァ言いながら、木の前まで走ってきました。
音はずいぶん大きくなっています。確かに、木の向こう側から聞こえてきます。
グオーグオー、ブルルルル、グオーグオー。
「ホラまた。絶対トナカイだクサ」
この木の向こうに、本当にサンタがいるのでしょうか。
ハンナはドキドキしてきました。ポヨンだって興奮しています。
サンタに会ったら、なんてあいさつしたらいいのでしょう。
ポヨンたちは音をたてないように、そっと木の向こうへ回り込んでいきました。
さあ、ついにサンタとご対面です。
「メリークリスマス!」
3人は声をそろえて、元気よくあいさつをしました。
けれど、そこにトナカイはいませんでした。サンタの乗るそりもありません。
ただ、サンタみたいな人はいました。それも、2人も。
ひとりは、赤い帽子をかぶって。もうひとりは、帽子はないけど手に
プレゼントを持っています。
帽子のサンタが、木の根元に寄りかかって「グオーグオー」。
プレゼントのサンタが、ときどき「ブルルルル」。
目をつぶって、気持ちよさそうにいびきをかいていたのです。
翌朝、ハンナは口をとがらせてポッポポにグチをこぼしました。
「サンタさんって、だらしないのよ。ガッカリだわ」
「そのサンタさん、赤い服じゃなくて、
スーツ着てネクタイをしていませんでしたか?」
「そうそう、それもガッカリなのよね」
「仕方ないですね、クリスマス・パーティーの夜ですから」
ポッポポは、笑いをこらえてそう言いました。