「あら、これって!確かポヨンとかいう、水の精じゃない」
ベランダの洗濯物についた、青いゴミのようなものを見ていたネコはびっくり。
そして、ヒラヒラとゆれているペッタンコのポヨンに話しかけようとしたときです、南風がピューと音をたてて吹き抜けていきました。すると、ポヨンのカラダは洗濯物のパンツから離れ、風と一緒に花びらのように舞い上がって行ってしまったのです。
「ねぇねぇ、ねぇったら。生きてますかぁ!?」

ポヨンは耳元に響く大きな声で、目をさましました。誰かがカラダをゆさぶっているようです。
「よかったぁ、生きてたのね」
くりくりした大きな目が、心配そうにポヨンをのぞき込んでいました。
ここは、どこなんだろう。あたりには、花のいい香りがしています。
「キミは?」
「わたしは、ハンナよ。花の精」
「花の精?ボク、ポヨン。水の精だよ」
「やっぱりね。きっと妖精だと思ったの」
ハンナはニッコリ笑ってうなずきます。頭のてっぺんについた花も、一緒にゆれました。
ポヨンが風にのってヒラヒラとここに飛んできたこと。カラダが紙のようにペッタンコだったこと。水をかけると、カラダがまぁるくふくらんで、ようやく目覚めたこと。ハンナは、一気にしゃべりまくりました。ポヨンはそれを、まるでひとごとのように聞いていました。超高速で回転する恐ろしい部屋のことまでは思い出したのだけれど、そのあとのことは、なにも覚えていなかったのです。
まわりには、色とりどりの花が咲き乱れています。
「ところで、ここはどこなの」
「公園よ。公園の花だんの中」
「公園に、プールはある?」
「プールはないけど、池なら、この花だんの向こうにあるわよ」
「イケ?」「小さい湖みたいなものよ」「ホント!?」
ポヨンは目を輝かせました。生まれ故郷の、なつかしい湖。あのきれいな湖が、こんなところにあるなんて。ポヨンは花をかきわけて、池に向かって走り出しました。
「あっ!ちょっと待って、ポヨン」