花の中を走り抜けると、目の前に水が見えました。まわりをぐるりと柳の木が囲んでいて、池の真ん中にはボートも浮かんでいました。
それは確かに、小さな湖のようにも見えます。でも、森の奥にあったあの美しい湖とは、やっぱり全然違います。そこにあるのは、キラキラ光る澄んだ水ではなく、すっかり濁ってよどんだ緑色の水。
「これが、池かぁ」
ポヨンは、ちょっとがっかり。しばらく迷っていましたが、それでも久しぶりに思いっきり泳いでみたい、という気持ちをおさえきれません。とうとう、池の中に飛び込んでしまいました。
「ポヨン、そこはダメーッ!」
ハンナの声が聞こえたときには、もう手遅れでした。
池の中は薄暗く、ほんのちょっとの先もよく見えません。それに、いやな匂いもしています。泳ぎの大好きなポヨンも、これではさすがにちっとも楽しくありません。
「やっぱり、クリーンさんちのプールはよかったなぁ。ここはヒドイや」
ブツブツ文句を言いながら泳ぐポヨンのカラダには、ヌルヌルした気持ちの悪いものがへばりつきます。
「ゲッ、たまんないなぁ」
もう池を出ようと岸に向かいはじめたときです、どす黒い不気味な影がこっちに近づいてきました。

「ウヒヒ、ウヒヒ。池はサイコーでやんす」
へんな声で笑う、ドロリとした緑色の生き物です。
しかも頭の先から、モヤモヤと何かがわき出ているではありませんか。
「ポヨン、逃げるのよ。早く!」
ハンナです。ポヨンを追いかけて、池の中に入ってきていたのです。
「あいつは、カビィ。汚れた水が大好きで、頭から胞子を出してはどんどん仲間を増やしていくの。このままここにいたら、息ができなくなって死んじゃうわ」
ハンナのことばにポヨンはびっくり。あわてて逃げ出します。
ところが、ふたりの行く手は、もうカビィの胞子でいっぱい。
「池をカビィの天国にするでやんす。ウヒヒヒヒ」