
▲宮殿よりも建設に労力がかかったといわれるベルサイユ宮殿の噴水庭園。近くに水源がなかったため、ルイ14世は10㎞離れたセーヌ川の川岸に巨大な機械を設置し、水を引いた。広大な敷地の中には無数の彫刻で縁取られた池があり、そのすべてが噴水となっている。
噴水の起源は古代のメソポタミア文明にまでさかのぼり、遺跡で発見された噴水跡から、当時の人々は自然に湧き上がる水に神秘的な力を感じ、それを大切にしたとされています。泉そのものを神聖なものと見なしていた古代ギリシャでは、泉を利用して噴水が造られ、その周囲に神殿が建てられました。
庭園や広場のデザインとして、装飾的なものが盛んに造られるようになったのは、ルネッサンス期以降のこと。その頃の代表的なものとしてはローマのトレビの泉やチボリの噴水、ベルサイユ宮殿(フランス)の噴水などがよく知られています。


1877年(明治10年)に開かれた第一回内国勧業博覧会を描いた錦絵。庭園の装飾として博覧会に初めて噴水が登場しました。
(東京国立博物館所蔵 image:TNM images Archives Source:http://TnmArchives.jp/)
あるがままの自然を生かし楽しむ日本では古来、庭園に噴水が造られることはありませんでした。ただ金沢の兼六園に、江戸末期に造られた日本最古とされる噴水が残されています。
日本に本格的な噴水が登場したのは、明治時代の博覧会でのこと。当時最新の技術を用いて技巧を凝らした噴水は、博覧会のシンボルとして人々の注目を集めました。その後、公園などをはじめ各地に数多くの噴水が造られるようになったのは、都市化が進み、自然が少なくなった高度成長期以降のことです。
▲金沢・兼六園にある、1861年(文久元年)に造られた日本最古といわれる噴水。噴水より高い位置にある霞ヶ池を水源とし、動力を使うことなく池の水面との高低差を利用した自然の水圧で噴き上がっている。水の高さは通常約3.5m。
現在では屋外だけでなくビル内のコンコースに噴水が設置されたり、ビルの窓ガラスや壁面に水を流す「壁泉(へきせん)」もよく見かけるようになりました。
噴水から音楽が流れ、水がメロディーに合わせて踊る「音楽噴水」も近年のトレンド。また霧状の水が発生する「ミスト噴水」も人気があり、その女性的で繊細なイメージが現代の癒し感として求められているようです。
なかでもとくに人気の高いのが「親水性噴水」です。これは飛沫を浴びることのできる噴水や、ジャブジャブ池、せせらぎなどをもつ噴水施設で、子どもが水に触れたり、水の中に入って遊べるもの。技術の面では、浄水技術が進んだことも、親水性噴水が望まれる背景となっています。
「子どもたちに水遊びをさせたい」という親たちの願いは、噴水のもつ社会的な役割の大きさを示しているともいえるかもしれません。

壁から流れ落ちる水の音が自然を感じさせてくれる“流れ系”のデザイン。屋内などでもよく用いられる。

カラフルな照明と大音響の音楽が感動を呼ぶエンターテイメント型噴水。写真は、スペイン・バルセロナのマジカ噴水。

水を霧や蒸気として表現した噴霧型の噴水。噴霧の粒子が10~20ミクロン程度で衣服や肌が湿る心配のないものもある。

床面からランダムに噴き出すタイプ。浄水が施された場所は、夏の子どもたちの水遊びの場としても人気。