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| 瀬戸内海の真ん中に位置する燧灘(ひうちなだ)。この海を南側から包みこんでいるのが、大きな鼓(つづみ)のような形をした四国の、北側のくびれた胴の部分だ。鼓の胴の左端近くにそびえている山が西日本の最高峰、石鎚山(いしづちやま)。伊予西条は、その麓の海に面した平野部の、こじんまりとした城下町である。 街の中心部を歩くと、冬羽のユリカモメが群れなして舞う姿とは裏腹に、潮の香りが感じられない。代わりに街の空気を満たしているのは、地中から湧きだしたばかりの水から生み出る、あのすがすがしい香りだ。 |
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今は市役所となっている西条藩の陣屋跡の堀には青く澄んだ水がたたえられ、市街を抜ける水路に流れ出ている。水路の中にはフナやカワムツなどの川魚に混じり、冬だというのに大きなアユが元気に泳ぎ回っていた。水温が一定に保たれる湧水ならではの「越冬アユ」だ。 街中には水が湧きだすモニュメントがいくつもあるが、そのすべてが天然のミネラルウォーターだ。もちろん、そのまま飲める。いや、飲めるどころではない。全国利き水大会で二度も「日本一おいしい水」に選ばれた名水中の名水なのだ。これが「うちぬき」と呼ばれる自噴式の井戸である。西条市内では汲み上げ式を含めた2000本ほどのうちぬきがあり、約6万人の市民の大半が、この豊富な地下水を生活に利用している。 ■料理にも最適な水 うちぬきは中心街のアーケード通りの中にもあり、軽やかな水音を響かせている。昼食に寄ったレストラン「くろねこ」のご主人、稲井廣幸さんは西日本の洋食界の重鎮で、阪神方面のホテルなどでのパーティー料理 長として出向くたびに、水質の悪さに悩まされるという。「大阪の水なんか1時間はグラグラ煮立ててからでないと料理に使えないね。それでも塩梅が安定しないから作りにくいよ。料理作って少し時間が経つと、パーンと塩が走る(味がきつくなる)。客席までに味が変わるから料理人泣かせだね」 |
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