■国も認めざるを得なかった牧場
当時国の奨励する方法と違ったこのやり方に、賛同する人は少なかった。補助金が出なかったり、抵抗も受けたそうだ。しかし晶さんは自身の理念を追求。ある日酪農先進国であるニュージーランドの学者が日本へ招かれ、もともと5分の予定だった斉藤牧場の視察が2時間以上に延びたのは、そんな矢先だった。
「その偉い学者が、国の視察団に“ここはすごい牧場になる”って太鼓判を押したんですよ。長いレポートも書いてくれてね」
家畜を使うこの方法は、「蹄耕法(ていこうほう)」と呼ばれ、実は酪農の盛んなニュージーランドでは古くから行われていた。これがきっかけとなり、晶さんは農林大臣表彰をはじめ、さまざまな賞を受賞することとなる。いまも日々刻々と変わる自然に耳を傾け、独自の感性を磨くのには余念がない。
「最近の牧場では邪魔だからって角やしっぽを切ってしまったり、乳量を多くするために運動もあまりさせないなんていう酪農が主流なんですよ。でも、そんなのが牛にとっていいわけはないんです」
ここでは角も尾もちゃんと備わった牛が自由に放牧されている。人工授精ではなく、すべて自然受精というのもいまでは珍しいことだ。結果、乳量はほかの牛の半分だが、寿命は3倍。山地を歩き回る健康な牛が、環境にも優しい安全な酪農を低コストで完成させたのである。
「やけっぱちにやってきたけど、いまは世の中の方が環境を考えるようになったでしょう。その意味で言ったら、斉藤牧場は時代の最先端にいっているわけですよ」 |
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斉藤晶さん77歳、いまもバラ線張りや雑草刈りなどをして牧場を回る日々 |
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クルミの木(写真・左)や木イチゴ(写真・右)など、自然の恵みも豊富 |
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暑い夏も木蔭に涼むことができる牛たち。斉藤牧場で生まれ育った牛は、太くて短いがっしりとした足で、山地を自由に歩き回っている |
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