水路に面した酒屋の女将さんが気さくな調子で語った。花の姿から「梅花藻」の名が標準語名となったが、土地の言葉では“水路のセリ”という意味で「ウダゼリ」と呼ぶそうだ。はて、セリには少しも似ていない姿だが?
「うちらはこれを食べるんですよ。春の若葉が柔らかいうちにね。花が咲くころは硬くなって食べられなくなるのよ」
なんと、バイカモが食べられるとは知らなかった。ぜひにも食べてみたい、とお願いをすると、女将さんは目の前で刈り取ったバイカモを料理してくれた。沸騰した鍋でバイカモをゆがくと、たちまち湯がアクで真っ黒に染まる。だが、そのおひたしと白和えはくせのない味で、しゃきしゃきとした歯ごたえが心地よい。
「この辺は雪が多くて春先に青物野菜がないからね。昔はこれがありがたかったんですよ」
清流の郷ならではの春の味。今の時代では、これこそありがたい御馳走ではないか。
