cleansui club (クリンスイ・クラブ)
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cleansui club 2006 春号 vol.23
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01 名水紀行 蒜山 真庭
02 水の匠たち ウォータージェットマシン
03 水と上手におつきあい 鼻洗浄で洗い流しましょう
04 吉川ゆりのあれこれ健康コーナー “正しい姿勢”
05 会員体験レポート サンドブラストに挑戦
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08
09
名水紀行
高原と旧街道の名泉を巡る・・・多田 実 蒜山 真庭
■地下から湧き出す大地のぬくもり

 まだ寒々とした冬枯れに見える岡山県・蒜山高原の雑木林。その中から響いてくる豊かな水音をたどっていくと、「塩釜(しおがま)の冷泉」が現われた。20坪足らずの小さな池だが、そこから湧き出す水量は毎秒300Lにもなる。
 泉から流れ出す小川の水音の中に、若い女性の「うふふ」という笑い声が聞こえた。見ると、泉の流れ出し口のたもとに二十歳前後の女性が腰かけている。その足元へ何げに視線を移した途端、思わず凝視してしまった。白い素足を清冽な水に深々と漬け込み、流れにさらし続けているのだ。これが着物姿の黒髪の女性が一人でいる状態だったら「まさしく物の怪の類か」と思うところだが、ともに髪を茶色に染めた今風の二人連れの女性であったので、少し安堵する。
 ただ、薮に覆われた池の周りでは、女性の足のすぐ傍らの下流でしか水を手ですくえる場所はなかった。いささか躊躇する状況だが、流れに手を入れて口に含むと思いのほか温かい。見た目の清冽さとは裏腹に、地下から湧き出す泉は大地のぬくもりを伝えていた。
 水の味は、素っ気ないほどに無味無臭であった。

■名水が育んだ名物「蒜山おこわ」

「ここの水はミネラルウォーターというより、蒸留水に近いね。硬度も鉄分も水質基準値の百分の1以下しかないんですよ」
「塩釜の冷泉」にほど近い『塩釜ロッジ』のカフェでコーヒーを飲んでいると、店のマスターが語った。コーヒーはもちろん、塩釜の冷泉の水で入れている。見事にひきたつ香りと爽やかな味を称賛していると、水の違いが一番はっきりするのは、名物の「蒜山おこわ」などの蒸し物料理なのだそうだ。
「水蒸気で蒸すわけだから、カルキなどの薬品の味がまっさきに立ちあがるでしょう。それを、おこわや蒸し饅頭が吸い取っちゃうんですよ。同じ材料で作ったおこわでも、岡山市内の水道水で蒸すと一発で終わりですよ」
 考えてみたら道理の話だ。マスターは蒜山おこわの仕出し注文に応じて岡山市内のスーパーで実演販売をすることもあるが、そのときは水も塩釜の水を持っていくという。

「こっちでイベントがあって大量のおこわを蒸さなくちゃならないときに、調理設備が足りなくて岡山市内の弁当屋で蒸してもらったら、もう駄目。馴染みの人が蓋を開けたとたんに嫌な顔してね。これ、おたくで作ったのと違うだろ、って言われちゃいました。材料はまったく同じものなんですけどね」
 岡山県内きっての名水として誉れが高い「塩釜の冷泉」だが、その水を当たり前のように飲んできた身では、他所に行ったときに困るのも頷ける。大阪などの大都市に出かける際は、塩釜の水を入れたペットボトルが必需品なのだそうだ。
「あの水道の水の臭い、とても口に入れられなくて、歯も磨けませんからねぇ」と、マスターは悩ましげに首を振るのであった。
■清流の象徴・バイカモが御馳走に

 蒜山高原の中心部である真庭市の旧八束村地区の市街地には、「使い川」と呼ばれる用水路が家々の前を流れている。昔は飲み水にもされていたが、井戸や上水道の普及によって次第に役割を失い、いまは主に融雪用水路としてか、農器具を洗うときに使われる程度だ。しかし、その澄んだ流れの中には、清流を象徴する水草のバイカモがゆったりと繁り、春の若葉の水々しい色を輝かせている。
「放っておくと繁りすぎるから、掃除して取り除くんですよ。最近は水がきれいな証拠だからって、人気があるみたいね。夏になると梅みたいな白い花が咲くし、まあ、都会の人から見ればこれも素敵なんでしょうね」 

 水路に面した酒屋の女将さんが気さくな調子で語った。花の姿から「梅花藻」の名が標準語名となったが、土地の言葉では“水路のセリ”という意味で「ウダゼリ」と呼ぶそうだ。はて、セリには少しも似ていない姿だが?
「うちらはこれを食べるんですよ。春の若葉が柔らかいうちにね。花が咲くころは硬くなって食べられなくなるのよ」 
 なんと、バイカモが食べられるとは知らなかった。ぜひにも食べてみたい、とお願いをすると、女将さんは目の前で刈り取ったバイカモを料理してくれた。沸騰した鍋でバイカモをゆがくと、たちまち湯がアクで真っ黒に染まる。だが、そのおひたしと白和えはくせのない味で、しゃきしゃきとした歯ごたえが心地よい。
「この辺は雪が多くて春先に青物野菜がないからね。昔はこれがありがたかったんですよ」 
 清流の郷ならではの春の味。今の時代では、これこそありがたい御馳走ではないか。 

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