■野仏が見守る香り高き名水
六郷満山の中心的な存在だった両子寺の七不思議のひとつとされる「走水観音の湧き水」を訪ねた。何が不思議なのかと思ったら「日照りのときも枯れず、大雨の後も増えず、夏は冷たく、冬は温かい。摩訶不思議なり」ということである。湧き水は普通そういうものでしょうが、などと思いつつも竹筒から流れる落ちる清水を柄杓ですくい、口元に近づけたとき、その香り高さに思わず手の動きが止まってしまった。今まさに、地中から湧き出したばかりの爽やかな水の香り。まるで調香師が「水の香り」の見本として調合したもののようだ。口に含むと、軽やかな甘みがはっきりと舌に広がる。これは国東の湧き水の多くに共通した特長であった。
国東随一の古刹である文殊仙寺には、かの役行者が岩を突いて湧き出させたという「智恵の水」がある。本堂に置かれた壺の中からその水をいただくと、やはり同じ甘さがしっかりと感じられた。
「修験道の寺はどれも山の上にありますが、お寺を開くときは、まずは水の確保からなんですよ。生活用水はもちろん、仏にお供えする水や、硯の水がなくては修業もできませんからね」と、文殊仙寺の住職が語った。六郷満山は二十八の本寺と三十七の末寺からなる一大霊場であったが、それを成り立たせていたのは国東の豊かな水の恵みであったのだろう。 |
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文殊仙寺の「智恵の水」は本堂の中でいただける |
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清水寺の境内に湧く霊水は平安時代から一度も枯れたことがないと伝えられている |
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