cleansui club (クリンスイ・クラブ)
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cleansui club 2006 秋号 vol.25
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01 名水紀行 赤谷の森
02 水の匠たち 玉川上水
n03 水と上手におつきあい 水墨画をはじめよう
04 吉川ゆりのあれこれ健康コーナー 肝臓を守りましょう
05 会員体験レポート 親子でカヌーに挑戦!
06 温故知水 ご当地アイス
07 杉井明美の 「季節を探しに〈続・実践編〉」
08 お店訪問 09 世界の水〈第15回〉
10 Enjoy!アウトドア 11 和食料理の基本のコツ
page1 page2 名水紀行取材チームのひとりごと
名水紀行
未来に引き継がれる関東屈指の森・・・多田 実 赤谷の森
 「この秋は残暑が長かったからねえ、いつもの年なら、もうぼつぼつ里の山も紅葉が色づいているころなんだけど」
 通りがかりに立ち寄ったそば屋の女将さんが気の毒そうに言った。
 坂東太郎・利根川の源流域にあたる赤谷川が流れ、猿ケ京(さるがきょう)三国温泉郷を擁する群馬県・旧新治(にいはる)村(*平成17年10月1日に隣の水上町と合併し、現在は「みなかみ町」)。標高の高さから、10月初旬には山々が紅葉に燃えているだろうと当てこんで訪ねてみたものの、少しばかり早すぎたようだ。
旧三国街道須川宿の街並み
 それでも秋の新そばの季節は既に始まっていた。地味な店構えで、何気なく立ち寄っただけのそば屋だったが、出されたそばの味は見事だった。香り高さと喉ごしのよさ、そしてあごの力を押し戻すようなコシ。東京だったら高級そば店の目玉が飛び出るほどの値段とひきかえにしても、そうはお目にかかれない代物だ。
山の中の一軒宿・法師温泉
■雑木林からの豊かな恵み
 「そばは、水とそば粉で決まっちゃうからね。良い水とさえあれば、そば打ちの技術は素人でもなんとか商売になるんですよ。ここの水は間違いなく良いですね。温泉と良い水のあるところでそば屋をやりたかったんですよ」
 脱サラして3年前に埼玉から移住してきたというご主人が語った。そばにつく天ぷらの素材は、ミズ(ウワバミソウ)の実や、シソに似たアカダの葉、アケビの実の皮などの秋の山菜だ。
 「この辺りの山で採ってきたものです。けっこう色々な山菜が採れるんですよ。天気のいい日は山菜取りにいきたいけど、お客も来るからなかなか暇が作れないんですわ」
 と、ご主人がぼやく。去年は山のクリが豊作だったけれど、今年は不作なのでクマが里に出て畑を荒らすかもしれない、という。良い水と豊かな山菜を育み、クマが息づく山の森は、広葉樹を中心とする雑木林だ。
 江戸時代から続く温泉郷であり、旧三国街道の宿場町の面影も色濃く残る旧新治村には、自然と文化が調和するゆったりとした時間が流れている。しかし、この一帯はかつて、大規模な開発計画によって大きく揺がされていた。
法師温泉のそばに湧く「長寿の泉」
■秘湯と暮らしの水を守る闘い
 「きっかけは、ここの下の猿ケ京温泉周辺の民家で、飲み水に異変が起きたことだったんですよ」
 土地の人から当時の様子に詳しい人物として紹介されたのが、山の中の一軒宿、法師温泉「長寿館」のご主人、岡村興太郎さんだった。弘法大師が見つけたと伝えられる法師温泉は、400年の歴史を持つ秘湯だ。ボーリングで掘った温泉ではなく、浴槽の底の玉砂利の下から湧いてくる天然温泉である。
スキー場開発から守られた水源の森。
この川の流れも開発計画に脅かされていた。
 鹿鳴館風の木造の大浴場は、伝統的な混浴を今も続けている。JRの「フルムーン」キャンペーンのポスターの撮影地として全国的に有名になった宿であった。
 この温泉を育む山の反対側の谷に、下流の猿ケ京温泉一帯の生活用水の水源地がある。その水の水質が、ある日突然変わった。お茶が黒くなり、洗濯水が茶色く濁り始めたのだ。原因は、生活用水の水源が変更され、酸性度が強い水が水源にされたことだった。酸性を中和するための薬剤が投入され、水の味も大幅に落ちた。 
 「以前の取水口は良い水だったのに、なんのためにそんなことをしたかというと、従来の取水口の上流に大規模なスキー場を開発する計画が持ち上がったからなんですよ」 
 そのスキー場開発で従来の水源が使えなくなるために、村役場によって新たな水源に変更されたのだそうだ。スキー場が作られれば、開発工事によって温泉の地下湯脈に影響が出ることも危惧された。 
 かくして、秘湯と水源の森を守るための“戦(いくさ)”が始まった。スキー場ができれば水源の森は大きく切り開かれ、スキーで滑りやすくするために雪を固める凝固剤が大量に振りまかれる。その凝固剤には発ガン性物質も含まれているという。 「森がつぶされ、川に毒性の高い凝固剤が流れ込めば、ここの自然環境はもう無茶苦茶になってしまいます。それはなんとしても止めたかったんですよ」
 ひなびた老舗の温泉宿の旦那と開発反対の自然保護運動、というと何となくそぐわない印象があるけれど、守ろうとしたのは「自然に育まれた人々の暮らし」であった。
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