cleansui club (クリンスイ・クラブ)
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cleansui club 2007 新年号 vol.26
表紙へ
01 名水紀行 宮島
02 水の匠たち さっぽろ雪まつり
n03 水と上手におつきあい カンタン・気軽にリフレッシュ!
04 吉川ゆりのあれこれ健康コーナー 足のつり対策
05 会員体験レポート 姉妹で木彫りに挑戦
06 温故知水 「若水とり・若水祭」
07 季節を探しに 08 お宿訪問
09 クリンスイNOW 10 Cleansui Club News
11 世界の水 12 Enjoy! アウトドア
13 ポヨンランド 14 和食料理の基本のコツ
page1 page2 名水紀行取材チームのひとりごと
名水紀行
五感で堪能する日本三景・・・多田 実 宮島
 幕末に瀬戸内海を訪れた欧米人らは、「世界にこれほど美しい海があったとは」と誰もが絶賛したという。湖のように穏やかな水面に、緑に覆われた優しい姿の島々が浮かぶ瀬戸内。その景色の中で育まれたものは、人の心をはじめ、すべてが美しく奥深くあるようで、東国育ちの者はたじろいでしまう。
満ち潮時の厳島神社。寝殿造りの回廊の廊下からかすかに聞こえる波音と潮の香りが、祭事の雅楽にとけこんでいく。
■宮島八景・「鏡の池」
“世界一美しい海”が入り江のように細く狭まった眺めになったとき、その対岸にある大きな島が、日本三景のひとつ、宮島である。「観音様が寝ている姿」に見えるという宮島の最高峰は標高535mの弥山(みせん)。その北斜面に広がる原始林は、厳島神社とともに世界文化遺産に指定されている。
 森が豊かな島に水が湧くのは至極当然の摂理。だが、海に浮かぶ厳島神社の境内に、引き潮とともに現われる真水の池があることは知らなかった。干潮時の境内を訪ねると、弥山からの伏流水が境内の浜に湧き出し、満月のように丸く浅い池をなしている。池からはひと筋の清水が静かに海へ流れ注ぎ、雅楽の調べが流れる中、やがて満ちてきた潮の中に池は消えていく。いやはや、なんとも雅びやかなことか。この池に映る月を愛でた平家の古歌が数多く残されているというのだから、鎌倉武士に追われたときは“野蛮人”に蹂躙される無念もさぞやだったろうに、と、いまさらながら妙に納得してしまうのである。
 と、港近くの土産物屋や飲食店の女将さんたちが往時の賑わいぶりを語る。管弦祭は夏に行われる宮島最大の祭だ。平清盛が京の都から移した「管絃の船遊び」に海上往来の安全祈願が重なり、かつては瀬戸内中の浜から手漕ぎの木舟が集まる中、一週間に渡って繰り広げられた一大イベントだったそうだ。管絃祭の一週間の売り上げで一年間の暮らしが成り立ったほどの賑わいだったけれど、今は集まる船も減り、祭も一日だけになってしまった。
「いまはエンジン付きの船だから、すぐに来てすぐ帰っちゃう。昔は四国や九州からも手漕ぎの船で来て、何日も島に滞在してお祭を楽しんでいったんだよ」
 80歳を過ぎたお婆さんが懐かしそうに語る。かつて市街地に10ヶ所あったという誓真釣井も、いまはこのひとつだけが現役だ。井戸は使い続けないと枯れてしまうのである。ゆっくりと時が流れていた豊かな時代の生き証人を励ましたくなり、しばらくの間、ガッシャン、バッシャンとポンプを押し続けた。
 
■井戸が伝える往時の賑わい
 厳島神社に近い市街地の中には「誓真釣井」(せいしんつるい)と呼ばれる古い井戸がある。約260年前、誓真という僧が飲料水不足に悩む島民のために掘ったとされる井戸で、港近くの住宅地の中に今も現役で残っている。
 訪ねた誓真釣井の手押しポンプの棒をガチャガチャと動かすが、まったく手ごたえがない。空井戸だったかと諦めかけたとき、井戸の前のアパートからお婆さんが現われ、「こうするんだよ」とレバーを高々と振り上げながら押しはじめた。と、ふいにジャバジャバと音がして勢い良く水があふれ出した。備え付けの柄杓で飲ませてもらうと、冷たくてまろやかな味。海辺に近い井戸でありながら、塩気はまったく感じられない。
「昔の管絃祭(かんげんさい)のときには、あの井戸が空っぽになるほどの人が来たものだけれどねぇ」
引き潮時に境内の浜に現れる「鏡の池」柔らかな水の流れが海へと続く
■カキを育む名水は今…
 フェリーが着く桟橋から厳島神社へ続く表参道の商店街の定番商品は「もみじ饅頭」に誓真僧が宮島土産に考案したという「宮島杓子(しゃくし)」。そして冬の今は「焼きガキ」が加わる。そこここの店先で殻ごとのカキが焼かれ、ぱくっと殻の口を開けた途端、あふれた汁が炭火に落ちてジュ〜ンという音をたてている。立ち上る煙の香りを嗅いだ客の反応は鋭く見抜かれ、やんわりと、しかし獲物を決して逃さぬ容赦のなさで「おひとついかがですか」という声がかかる。
冬の宮島は焼きガキが名物。これを食べずには帰れません。
店先で一個から買って食べられるので、ついひとつ買ってしまう。ぷっくりとした大粒のカキの白い身を口の中で噛みしめると、中から海の滋養を濃縮したような汁があふれ出す。それでもうひとつ、またひとつということになってしまうのである。
 弥山から眺める島周辺の海は、カキの養殖イカダが連合艦隊のように連なって浮かんでいる。養殖といっても、その種となる稚貝は海で天然繁殖したものだ。観光客で賑やかな市街地を抜け、海岸沿いの道で浦をひとつ越えると宮島の景色はうって変わり、深い森を背負った畑と漁りの浜になる。潮の引いた浜でアサリを獲っている漁師さんがいた。
「本当はアサリは春からが旬のものなんだけどね。明日の朝市で出すぶんだけ獲ってるんだよ」
 アサリもカキも、海に真水が湧き出す周辺のところのものがとくに旨いという。
「ここの水は旨いよ。町の方の水道は対岸から引っ張ってきた市水道だからカルキ臭くってね」
 豊かな森に恵まれた宮島は、かつては沢水を利用した簡易水道やボーリングの水で島内すべての水をまかなっていた。ところが公共下水道の整備が進む中、島の水だけでは生活用水をまかなえなくなり、約30年前から対岸の廿日市(はつかいち)市より海中パイプで市水道を導入している。その水源はダムの貯水池だ。昔は宮島の美味しい水が、よそから来た人にも自慢できたのに、と多くの人が口をそろえ、往時の水の味を懐かしんでいる。
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