cleansui club (クリンスイ・クラブ)
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cleansui club 2007 夏号 vol.28
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01 名水紀行 四万十川
02 水の匠たち 日本泳法
n03 水と上手におつきあい 汗かき美人に!
04 吉川ゆりのあれこれ健康コーナー 内臓にも関わる顔のツボ
05 会員体験レポート 舞妓に挑戦!
06 タンサン先生の炭酸泉指南 いま話題の炭酸泉って?
07 季節を探しに 08 お店訪問
09 クリンスイNOW 10 Cleansui Club News
11 世界の水 12 Enjoy!アウトドア
13 ポヨンらんど 14 和食料理の基本のコツ
page1 page2 名水紀行取材チームの裏話
名水紀行
遊び、食べ、川に寄り添って暮らす・・・多田 実 四万十川

 エメラルド色に澄みきった淵に半身まで入り、そっと箱めがねで水の中をのぞく。いるいる、胸に鮮やかな金色の班模様をもったアユが、群れをなして泳いでいる。川底の石を縄張りにしたアユは、同じ石のまわりを行ったり来たりしている。
 短めの竿を延ばし、錨(いかり)型の掛け針と錘のついた仕掛けを縄張りのアユのそばに送り込む。アユの動きのリズムをとらえ、掛け針の上に泳いでくるタイミングを読む。……来た、今だ!
 竿をしゃくり上げると同時に、アユが川底でもんどりうって白い腹を見せた。続いて竿が猛烈な力で引き絞られ、満月の孤を描いた。

  • 中津川の清流で玉じゃくり。
    周囲の森からはセミしぐれが響いてきます。
  • 芸術品のような姿のアユ。
■ 四万十川最後の源流

 高知県の伝統的なアユの漁法、「玉じゃくり」は水中を泳ぐアユを目で追いながら針に掛けるものだ。だから、本当に水が澄みきった川でなければできない。
「玉じゃくりができる川こそが本来の川。玉じゃくりで獲ったアユを食べてこそ、本来のアユの味がわかるんよ」

 玉じゃくりを愛好する古老から、そんな話を聞いたことがある。だから、「最後の清流」の四万十川の中でも、とびきりに美しい水が流れるこの支流の淵で玉じゃくりをし、そのアユを食べてみたかったのだ。
 その支流の名前は中津川。四万十川に残された「最後の源流」とも言える川だ。四万十川といえども本流や大きな支流にはダムや堰堤があり、そこで取られた水は本来の川筋を流れることができない。中津川は本流筋の中流域に位置する四万十町の山から流れる支流だけれど、ダムや堰堤に水を取られることなく海まで流れる川としては、最も奥まったところにある。ゆえに「四万十川最後の源流」なのだ。
 近年の四万十川の水質とアユの味の低下を嘆く地元の方でも、中津川の話になると「あそこのアユはうまいよぉ」と、急に自信を取り戻した表情で語るのである。
 湧き水が流れる森の中で炭火をおこし、獲ったアユを塩焼きにした。身は締まり、骨は柔らかく、頭から尻尾まで、もちろん内蔵も、すべてが豊かな甘みを含んでいた。まるで極上の出汁を利かせた野菜のような味わいだ。良い川と、良い水が、本来の恵みの味を育んでいた。

■今も残る源流の桃源郷

 玉じゃくりでアユをかけた淵の上流に、川と同じ名前の「中津川」という集落がある。山の奥にぽっかりと開けたその集落でただ一軒の農家民宿に泊まり、朝のコーヒーをいただいていると、山の方から「キョロロロ…」と澄んだ声が聞こえてくる。アカショウビンという、真っ赤な嘴(くちばし)をもつカワセミの仲間の鳥だ。
「ヤイロチョウの声も、わりとよく聞かれますよ」
 民宿「はこば」の女将が、高知県の県鳥にもなっている極彩色の鳥の名を告げた。ともに夏になると南から渡ってくる希少な鳥で、豊かな水を育む広葉樹の森の中で子育てをする。愛鳥家にとっては憧れの“幻の鳥”たちが、ここでは日常の隣人だ。
 コーヒーが素晴らしくおいしい。インスタントだけれど、都会で飲むレギュラーコーヒーよりも、ずっと純粋な味がする。

  • 昔前の暮らしと風景が今も息づく中津川集落。
  • 中津川が流れる「久木(くき)の森」風景林の名水。
  • お盆になるとスイカがぎっしり浮かぶ水場。

「向かいの山から引いている、うちだけの水ですよ。ここではそれぞれの家が、自分の持ち山から水を引いているんです」
 町が引いた水道もあり、用途によって山の水と使い分けているが、月に8トンまでは基本料金のままだという。都会の水道事情からすれば、とんでもなく贅沢な話だ。
 集落の前を流れる川では、いまも野菜や農機具を洗う人の姿が見られる。人家が並ぶ道沿いにも「泉(いずみ)」と呼ばれる湧き水の水場があって、シロウリやスイカが冷やされている。
「昔はこういう水場がいくつもあって、皆が野菜を洗ったり飲み水を汲んでたんだけどね。いま残っているのはここだけ。そりゃシンクのほうが楽だもの」
 水場の隣家に住むお婆さんが語った。最後に残された水場には、お盆の帰省時期になるとスイカがたくさん浮かんで賑やかな様子になるという。往年の四万十川本来の暮らしぶりが、中津川の里ではいまも静かに受け継がれている。

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