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クリンスイ・ウォーターアライブ、今月は、落語家の柳亭市馬さんが、語ります。
私の故郷は、大分県の豊後大野市、緒方町というところです。
のどかなところですが、緒方川という、実に美しい川があり、
おいしい水のおかげで、米どころでもあるんです。
子どもの頃は、この川で、ずいぶん遊びました。
亀がいましてね、これを捕まえて、家で飼っていました。
いま、亀というとペットショップで買うのが人気だそうですが、
捕まえてきてこそ愛情がわくもので、いまも懐かしく思い出します。
いま、故郷に帰って一番の楽しみは温泉ですね、
なにしろ大分と言えば、温泉の宝庫ですから。
なかでも湯布院の温泉は一番のひいきです。
実家からは4〜50分くらいで行けるんですね。
本当は、仕事で地方へ行くときにも土地土地のお湯につかりたいのですが、
案外チャンスがない。
「強情灸」という噺のまくらに、熱い風呂を我慢して入る場面がありますが、
私の場合は、ぬるめのお湯に、ゆっくりつかるほうが好きで、
風呂は結構こだわっているんですよ。
古典落語「うどんや」をご存知でしょうか?
冬の話で、鍋焼きうどんの屋台にやってきた酔っ払いが、
一杯の水をもらい、うまそうに飲む場面があります。
「酔い覚めの、水千両と値が決まり」
という川柳がありますが、まさにその通り。
実は私は、お酒はいただけない、いわゆる下戸でして。
酔っ払いの了見はいまひとつ分からないのですが、
水の味というのは、わかるつもりですから、
この場面を演じるたびに、おいしい水の味を思い出します。
水は、芸の肥やしにもなるんですね。
落語の世界では、舟は重要な交通手段です。
中でも「船徳」と「三十石」は、私も演る機会が多いのですが、
二つの舟には大きな違いがあります。
「船徳」では、遊び人の若旦那がにわか船頭になり、おだやかな隅田川を、
夏の川風に吹かれ、四苦八苦して進みます。
「三十石」では、腕利きの船頭が大勢の客を乗せて、淀川を豪快に下ってゆく。
高座を水面に見せる、噺家の腕のみせどころです。
皆さんにも、ぜひ生で味わっていただきたいですね。